物流コスト削減方法と具体的事例を詳しく解説

物流コスト削減方法と具体的事例を詳しく解説

物流業界では2024年問題の影響や燃料費の高騰などにより、物流コストは上昇傾向にあります。そのため、物流コストの削減は企業の収益性、競争力を左右する重要な課題となっています。

物流コストには、輸送費だけではなく、商品が生産地点から消費地点に届くまでのあらゆる物流関連費用が含まれます。そのため、効果的に物流コスト削減を進めるには、コストの内訳を把握し、それに合った削減方法に取り組む対策が欠かせません。

本記事では、物流コストの内訳とその削減方法を解説し、コスト削減の成功事例を紹介します。

この記事でわかること

  • 物流コストの削減方法

1.物流コストの内訳

物流コストとは、商品が生産地点から消費地点に届くまでのあらゆる物流関連の費用のことで、主に以下の5つで構成されています。

1.輸送・運送費

2.荷役費

3.保管費

4.包装費

5.物流管理費

各費用に含まれる具体的な内容は、以下の通りです。

項目

内訳

輸送費

運送料、配送業者費用、チャーター費、燃料費、通行料金

荷役費

荷物のピッキングや仕分け、積付け、入出庫・運搬作業にかかる費用、荷役作業スタッフの人件費

保管費

倉庫賃料、光熱費、倉庫維持費、保険料

包装費

梱包資材費、梱包作業費

物流管理費

物流管理システムの導入費用、運用費、人件費

※参考:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 ,2024年度物流コスト調査(記入要領),p2


物流コスト削減のためには、まず費用の内訳を把握し、どこに無駄なコストが発生しているかを特定する必要があります。物流コストの詳しい内容については以下の記事をご参照ください。


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2. 物流コスト削減の方法

ここでは、各費用に対しての具体的な削減方法を紹介します。

輸送費

輸送費は、物流コストの中で最も大きな割合を占めることが多いです。日本ロジスティクスシステム協会の調査(※)でも、輸送費が物流コストの57.6%、保管費が16.4%を占め、特に製造業では輸送費の割合が大きい傾向にあります。

そのため、輸送費用の抑制は物流コスト削減に直結します。


※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,2023年度 物流コスト調査報告書【概要版】,p3

1.輸送ルートの最適化

輸配送管理システム(TMS)を導入し、走行距離や運行時間を短縮することで燃料費や人件費を抑えることができます。


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2.共同配送の活用

他社との共同配送を行い、積載効率を向上させることで輸送トラックの稼働台数を削減します。

共同配送は配送回数を減らす効果もあり、環境負荷の軽減にもつながります。

3.モーダルシフトの推進

トラック輸送から鉄道や船舶輸送への切り替えを行うことにより、燃料費削減や環境負荷低減を目指します。特に、長距離輸送のコスト削減に効果がある方法です。

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荷役費の削減方法

荷役費の削減には、荷役作業の時間短縮や荷役作業にかかる人件費の削減が有効です。

1.自動化技術の導入

荷役作業に作業ロボットなどの自動化技術を導入することにより、コスト削減だけでなく作業効率向上や人的ミスの削減も期待できます。

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2.ルールの策定

荷役作業のルールを明確化し、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底することで無駄なコストを削減します。例えばパレットや台車の保管場所を固定化し、必要なものを即座に取り出せるようにすることで作業効率を向上させ、人的ミスも削減可能です。

保管費の削減方法

保管費は、倉庫の運営コストや光熱費、人件費などを含みます。以下の方法で削減が期待できるでしょう。

1.倉庫スペースの有効活用

倉庫内レイアウトを見直しデッドスペースを最小限にすることで、より多くの在庫を効率的に管理できます。

2.拠点の統廃合

複数の小規模倉庫を統合することは、運営コストの削減につながります。

3.ジャストインタイム方式の導入

必要な量を必要なタイミングで調達することで、過剰在庫を削減し保管コストを抑制できます。

例えばAIを活用した需要予測を用いると、在庫水準を適切に維持できるでしょう。


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4.棚卸し資産の可視化

倉庫管理システム(WMS)を導入し在庫情報をリアルタイムで把握することで、在庫回転率を高め、無駄な在庫の発生を抑えることが可能です。


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包装費の削減方法

包装費は、主に梱包資材に注目した削減方法が効果的です。

1. 過剰包装の見直し

過剰な梱包や包装方法を改善し、作業効率向上や環境負荷低減を図ります。

2. 包装材の標準化

包装材の標準化は、調達コストや在庫管理の効率を高めます。例えば複数サイズの箱を統一することで、調達先との大量購入契約によるコスト削減が期待できるでしょう。

3. 包装工程の自動化

包装作業を自動化する設備を導入し、作業精度向上と人件費削減を実現します。特に繁忙期や大量包装が必要な場合、効率的な対応が可能になります。

4. 包装材のリユース促進

リターナブルコンテナや再利用可能な包装材を活用することで、長期的な資材費削減が期待できます。顧客との間で資材を回収・再利用する仕組みを導入すれば、コスト削減と環境負荷低減を同時に実現できるでしょう。

物流管理費の削減方法

物流管理費にはシステム費用や人件費が含まれるため、コスト最適化には多角的なアプローチが求められます。具体的には、以下のような削減方法があります。

1.システムの見直しや統合

複数の物流管理システムが運用されている場合、システムを統合することで重複するコストを削減できます。クラウド型物流管理システム(WMSやTMS)を活用すれば、初期費用を抑えつつ運用コストの最適化が可能です。

2.ペーパーレス化

帳票や伝票などの紙媒体をデジタル化することにより、環境負荷軽減、印刷費や保管コストの削減を実現します。

3.人件費の抑制

繁忙期と閑散期に応じた柔軟な人員配置を行い、過剰な人件費を抑制します。

長期的視点での物流コスト削減

長期的なコスト削減には以下の方法があります。

1.物流DXの推進

様々なデジタル技術の導入により、物流業務全体の効率化を図ります。また、データの蓄積を通じ、さらなる効率化に向けた改善策を検討することも可能になるでしょう。


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2.アウトソーシングの活用

倉庫業務や配送業務を専門業者に委託することで、コスト削減と業務効率化を両立できます。信頼性とコストのバランスを考慮した選定が重要です。


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3.サプライヤーとの価格交渉

サプライヤーとの価格交渉は、物流コスト削減の有効な方法です。例えば倉庫業者との契約内容を見直し、一時的な割引や長期的なパートナーシップを提案することで、年間コストの削減が期待できるでしょう。

4.定期的なKPI分析

物流パフォーマンスを継続的に評価し、KPIをもとに改善策を実施することで、持続的なコスト削減が可能です。


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3. 物流コスト削減の成功事例

以下に、物流コスト削減の成功事例を3つ紹介します。

共同配送による輸送コスト削減の事例:伊藤ハム物流株式会社

伊藤ハム物流株式会社(現アイエイチロジスティクスサービス株式会社)は、2002年より同業他社や異業種企業との物流センター共同化、配送の共同化を実施しました。四国、近畿、岡山、福知山エリアにおいて物流協議会を通じてメーカー間の協力体制を構築し、リードタイムの短い少量配送や遠隔地配送でのコスト削減を目指しました。


その結果、輸送コストは最大40%削減、月間配送費は事例により20万〜90万円改善しています。また、トラックの納入台数削減により配送効率を向上させ、在庫集約や労務負担の軽減にも成功しました。


※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,加工食品(ハム)の共同配送 <伊藤ハム物流(株)>

荷役作業自動化による人件費削減の事例:日本通運株式会社

日本通運株式会社は、自動フォークリフト(AGF)4台とオートレーター(自動垂直昇降機)2基を活用し、夜間の出荷準備作業を完全自動化しました。また、繁忙時の入出庫作業を補助することで、縦持ち作業を効率化しました。


その結果、深夜時間帯に約270パレットが自動搬送され、残業時間は1〜2時間/人/日削減されています(年間約3,000時間、人件費約1,000万円削減に相当)。さらに、オートレーターの稼働率を向上させ、入出庫作業の錯綜の解消、および人と荷役機械の役割分離が実現し安全性も強化されました。

※出典:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p10

包装費削減の事例:日本水産株式会社

日本水産株式会社(現株式会社ニッスイ)は、海外工場における水産品の包装資材削減と荷役作業の効率化を目的に、1999年よりシートパレットを導入しています。従来のマスターカートンから、すり身ブロックを108単位でシュラウドで包装する方法に変更しました。


その結果、包装資材を52%削減し、廃棄コストや荷役料を抑制しました。シュラウドはパレチゼーションによる作業軽減やコスト削減に貢献しましたが、ラップの過剰使用や受け入れ先の制限が課題として残っています。

※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,海外工場における包装資材の減量化 <日本水産(株)>


4. まとめ

物流コストの内訳を把握し適切な削減方法を実行することは、企業の成長と競争力の向上に役立ちます。自社の輸送コストの内訳を精査し、本記事で紹介した方法や事例を参考に最適なコスト削減方法を実行して、効果的なコスト削減につなげましょう。




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