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エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに毎月お届けしているハコベルのスペシャルウェビナー。独自のAIプラットフォーム開発を手掛けるNECから梅田陽介氏をお迎えし、ロジスティクス業界におけるAI活用事例、DXを越える「AX」、今後のロジスティクス業界の展望などについてうかがいました。
日本電気株式会社(NEC)
ロジスティクスソリューション統括部
プロフェッショナル
梅田 陽介 氏
岐阜県山県市出身。NECに入社後、東海エリアで営業を経験。その後、荷主企業や物流事業者に対する物流ソリューション営業やマーケティングを担当。現在はロジスティクス分野の事業開発を推進し、ロジスティクスDXを推進するサービスを手がける。また、企業・場をつなげる共創コミュニティを運営してロジスティクスの課題解決に取り組んでいる。
エルテックラボ L-Tech Lab
菊田 一郎 氏
1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は約1,000件、講演・寄稿など外部発信多数。 2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで㈱日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。
菊田氏による簡単な要点紹介の後、梅田氏が登壇。まず所属企業について紹介しました。NECは1899年に、日本初の外国資本との合弁企業として創業。電話機の輸入販売から事業を開始。そこからメーカーとして電話機、PC、サーバー、半導体、海底ケーブル、人工衛星など幅広いものづくりを行い、見込み生産品から受注生産品まで多様なサプライチェーンのタイプがある中で事業を行ってきました。
そして1990年代に到来した電機業界の冬の時代に、コスト競争と多品種少量生産・短納期化への対応からサプライチェーン改革を決断。トヨタ生産方式を取り入れて改革を進めてきました。当時は営業・生産・物流がバラバラで、納期調整に時間がかかることが課題でした。そこで物流に定期便を設定し、そこに営業・受注・生産を合わせることで納期調整を短縮。全体最適を図りました。梅田氏は「物流を起点にしたことが改革のポイントでした」と物流の重要性を強調しました。

住所を自動で読み取るOCR技術を郵便局に長年提供するなど、昔から高い画像認識技術を持つNECは、WMS(倉庫管理システム)や検品支援システムなど物流のITサービスも提供してきました。そして今年から「AI Native Company」を方針に掲げ、AX(AIトランスフォーメーション)、つまりAIを起点としたビジネスモデルの改革を加速しています。「私たちがめざすのは、人とAIの調和による社会貢献です。AIが全てを支配するのではなく、あくまでも主役は人間として考えています」
ここで梅田氏は、IT・DX・AXの違いを説明。

「人が行う業務の一部を効率化・標準化するのがIT。DXも人が業務を行う前提ですが、デジタルの力でビジネスモデルを再設計することを指します。AXは業務プロセスをAIが実行・改善しやすいように再設計し、最適化されたフローをAIと人が分業・協業すること。AIと人がパートナー関係となる点がポイントです。ただ、AXが普及してもDXが不要になるわけではありません」
続いて話は、ロジスティクス業務の完全AI化、言うならば「AIロジスティクス部」はありうるのか?を論点に、NECグループ内で取り組んでいるロジスティクスのAI化事例へ。

調達交渉については、すでに実運用が始まっています。注文や在庫の情報をあらかじめ連携させておくことで、AIエージェントが納期・数量調整が必要な注文を自動検出。必要に応じて交渉案を自動策定し、チャットでサプライヤーに提示して交渉を進めます。事例では、取り組みの約95%がAIによる交渉のみで完結し、所要時間は数日から約80秒へと飛躍的に短縮。高速化により機会損失や在庫・供給途絶リスクを抑えています。
人間と違ってAIは極めて合理的に進めるので速い。初めての取引などには人が必要ですが、ある程度パターンが決まっている定常取引にはAIの活用が効果的です」
関係者の調整が大きな負担となっている拠点間の在庫移動にも、AIが有効です。AIは部門を横断した全体把握を容易に行える上、24時間の稼働が可能。人間が実務を進めている間に、需要予測、在庫移送案の作成、関係者の調整を実施します。NECは2026年9月からドラッグストア事業を展開する株式会社ツルハホールディングスと適正在庫運用に向けた実証実験を開始しています。
輸出入で必要となる税番判定は通関士に頼ってきましたが、近年は通関従事者数の減少に加え、物流が発生する前に判定が必要なEUの諸規制などにより、内製化の必要が高まっています。生成AIを活用したNECの「AI税番判定サポート」は、数秒で根拠とともに税番候補を提示し、税率を表示。通関事業者だけでなく、製造業や商社といった荷主企業でも導入が進んでいます。

梅田氏は、「AIを活用したスマートな業務は学生にも訴求力があり、ロジスティクス業界の人材不足打開にも有効」と訴えました。
このようにAI活用が進む中、ロジスティクスの仕事はどう変わっていくのでしょうか。梅田氏は、これまで荷主企業や通関事業者の複数部門が行ってきた情報のリレーが減っていくと指摘します。「場合によっては2カ月かかることもあったリードタイムは最長でも数日程度に短縮され、AIを活用するか否かでビジネススピードが雲泥の差となり、AIを活用する企業とそうでない企業に大きな差が生まれるでしょう」

ロジスティクス業務には車両手配や在庫管理など調整業務が多く、関係者も多数います。だからこそAXの効果は大きく、高速化は業務全体に拡大。社内業務も企業間調整もネットワークで結ばれ、調整業務は自動化されていくといいます。では、人の仕事はなくなっていくのでしょうか? 梅田氏は、リレー役から設計・推進役にシフトすると予測します。設計役は現在の業務にどうAIを活用してどうプロセスを変えるかを考え、推進役は「何をすべきか」「誰と組むのか」といった目標設定やパートナーシップ構築、あるいは計画策定や合意形成などを主導。梅田氏は「こうした業務において、むしろ人材の価値は高まっていく」との見解を示しました。

そして業界においては、取引ネットワークとプレイヤーの変化が考えられるといいます。荷主企業はネットワークを活用して幅広い輸送パートナーと輸送網を構築するようになり、物流事業者ではAIが営業機能を担い、委託先・同業者と連携して輸送網を構築。他業界からの参入もあり、業務全般にAIを活用したサービスを提供するプレイヤーが現れる。そんな未来がすぐそこまで来ています。
講義は後半に突入し、話は全体最適への取り組みへ。梅田氏は物流変革が進まない理由として以下の3点を挙げました。
そして、構造が複雑な物流には「目的」「組織」「計画と現場」「情報」の分断が存在すると指摘。AXを進めて解決するには「4つのP」が必要だと訴えました。


「理論だけだと現場の人にはなかなか理解してもらいにくいのですが、試行錯誤しながら実践することで理解していただけます。解決すべき課題の時間軸を意識することが大事です」と梅田氏は熱を込めて説明しました。
DX/AXをめざし、NECは「4つのP」をつなげる取り組みを各企業とともに推進。「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」を通じてPeople(人)を集め、課題やノウハウをPractice(実践)として共有・議論。Platform(基盤)を活用して実行しています。

同コミュニティには、製・配・販さまざまな企業から課題意識を持つ人が参加しています。これまでキユーピー、サッポロビール、日清食品などからゲスト講師を招き、「CLO」「水平・垂直連携」などのテーマについて議論。さまざまな業界・業種、荷主企業、運送事業者まで垣根なく意見交換し、解決のヒントを持ち帰っています。
議論にとどまらず、データを活用した実践にも注力。同社はデータドリブンによる最適化プログラムを行い、各社が持つ物流データを預かって分析しています。データ提供者は、自社物流の現状や企業間連携の可能性を把握し、全体最適に向けたさらなる効率化の余地や共同輸配送の提案を受けられます。
約1年半前には企業間の輸配送シェアリングサービス「共同輸配送プラットフォーム」を開始。登録するとルート単位でパートナー候補を探すことができるほか、共同輸配送プランの作成や条件調整もサポートも受けられます。製品カテゴリは飲料、日用品、IT機器、建築資材、自動車部品など多岐にわたり、大手メーカーから地場の物流事業者までが参加しています。

以下に利用者の声を抜粋して紹介します。
「ずっと親会社の仕事をやってきたが、方針転換により外販に注力することになった。ノウハウがない中で新規開拓は難しかったが、このプラットフォームを出会いの場として活用し、共同輸配送が成立。積載率・稼働率を約1.5倍という成果を上げられた」(メーカー系物流子会社)
「これまではクライアントに合わせてチャーター便を手配してきたが、手配が難しくなったので共同輸配送便に置き換えた。精密機器なので、品質担保のための条件に合うところを探すのに活用した」(精密機器メーカー)
同プラットフォームは、情報を集約してデジタルデータとして関係者間で共有可能にし、複雑な手作業や属人化された業務プロセスを、効率的かつ標準的な仕組みへと転換。各社で共同輸配送のフォーマットは違いますが、このプラットフォームは標準的な仕組みに転換できるため、既存の物流データを活用可能。「共同輸配送だけでなく庫内オペレーションや輸出入とも連携することにより、今後も「情報の可視化」「プロセスの標準化」「全体再構築・最適化」を支援していきます」

「ロジスティクスは複雑化している上に、これからは1社単独では運べなくなっていくので、各社で協力し合う必要があります。みんなで解決していく場を、デジタルの力で作っていきたい」と梅田氏は力強く話しました。
・「AX」とは、AIと人の協働を前提に仕組みを再構築すること。
・人の仕事は今後、情報の橋渡しから業務の再設計へと移っていく。
・「Purpose」「People」「Practice」「Platform」の4つのPが、ロジスティクス領域にある意思決定・業務設計・投資判断という壁を乗り越える鍵となる。
講義内容を振り返って改めてポイントを挙げた梅田氏は、「NECは共創コミュニティ、最適化プログラム、デジタルプラットフォームを通じて『ロジスティクスの未来に、つながる革新』を実現していきます」と結びました。
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